闇夜の偶像 (Yamiyo no Guuzou - Idol of the Dark Night)
Drama
14 to 20 years old
2000 to 5000 words
Japanese
私は星宮 蛍(ほしみや ほたる)。17歳。穏やかな春の日に、私は人生で最も大切なものを失った。
私の妹、花火(はなび)は、いじめが原因で自殺した。首を吊った彼女を見つけた時の光景は、今も鮮明に私の脳裏に焼き付いている。
花火は明るくて優しい子だった。小さな頃から歌とダンスが好きで、いつかアイドルになるのが夢だった。動画投稿サイトにこっそり自分の歌をアップロードしては、私たち家族だけに見せてくれた。でも、学校では陰湿ないじめに遭っていた。それを知っていたのに、私は何もできなかった…。
花火の葬儀が終わってから、私の心には黒い闇が広がった。喪失感、後悔、そして何よりも憎しみ。私は決意した。花火を苦しめた加害者たちに、同じ苦しみを味わわせてやる…。
復讐の方法を探しているうちに、ある噂を耳にした。ある闇の動画投稿チャンネルの噂だ。
そのチャンネルは「デス・パレード (Death Parade)」と呼ばれ、非常に残虐で恐ろしい動画をアップロードしているらしい。見た者は精神を病み、最悪の場合、自 殺してしまうという。
誰も戻ってこない…そんな恐ろしいチャンネルが存在するのか?私は半信半疑だった。しかし、花火の加害者たちを地獄に突き落とすためには、どんな手段も厭わない。
私は「デス・パレード」について調べ始めた。インターネットの闇の中に隠された、そのチャンネルの存在を突き止めるのは容易ではなかった。しかし、数週間後、私はついに動画投稿チャンネルの連絡先を見つけた。
私は震える手でメッセージを送った。「従業員として雇ってほしい」と。
数日後、返信があった。面接の日時と場所が記されていた。指定された場所は、街外れの古びた倉庫だった。
倉庫の中は薄暗く、異様な雰囲気が漂っていた。奥に進むと、埃っぽいオフィスのような場所に出た。そこにいたのは、冷たい目をした男だった。
「星宮 蛍さんですね。私がこの動画投稿チャンネルの責任者、影山(かげやま)です」
影山は淡々と私にデス・パレードの概要を説明した。彼らは、闇の住人たちの心の闇を具現化した動画を制作し、世界に絶望をばら撒いているという。
「なぜ、うちで働きたいのですか?」影山は私の目をじっと見つめてきた。
私は正直に答えた。「復讐のためです。私はいじめによって妹を失いました。加害者たちに、同じ苦しみを味わわせたい。そのためなら、どんなことでもします」
影山はニヤリと笑った。「面白い。あなたの闇は深い。気に入った。採用しましょう」
私はデス・パレードの一員となった。最初に与えられた仕事は、動画の編集作業だった。次々と送られてくる動画は、目を覆いたくなるほど残虐なものばかりだった。人間が持つ闇の深さに、私は毎日打ちのめされた。
しかし、私は徐々に闇に慣れていった。麻痺していった。そして、影山は私に新しい役割を与えた。
「そうだ。だが、普通のアイドルではない。あなたは『闇のお姉さん』として、視聴者を絶望の淵に突き落とす存在となる」
私は闇のお姉さんとして、動画に出演することになった。可愛らしい衣装を身にまとい、笑顔で残酷な動画を紹介する。そのギャップが、視聴者の心を狂わせるのだという。
最初は抵抗があった。しかし、加害者たちへの復讐のためだと自分に言い聞かせた。私は闇に染まっていく自分を止めることができなかった。
影山は満足そうに笑った。私の動画は瞬く間に人気を集め、デス・パレードの視聴者数は爆発的に増加した。
私は闇のお姉さんとして、人々に絶望を届ける毎日を送っていた。しかし、心の奥底では、花火の幻影が私を見つめていた。
ある日、私は動画の編集中に、花火が動画投稿サイトにアップロードしていた歌を見つけた。久しぶりに聞いた花火の歌声は、優しくて暖かくて、私の凍り付いた心を溶かした。
私は泣き崩れた。私は一体何をしているんだ?復讐のために闇に染まり、罪のない人々を絶望させている。これは本当に花火が望んでいたことなのか?
私は影山に辞めたいと伝えた。しかし、影山はそれを許さなかった。「あなたはもう、デス・パレードの一員だ。抜け出すことはできない」
影山は私に加害者たちの情報を渡した。「復讐したいのでしょう?彼女たちの居場所は分かっています」
私は迷った。今さら復讐なんて意味があるのだろうか?花火はそれを望んでいないのではないか?しかし、私は 闇に囚われていた。憎しみと怒りが、私を支配していた。
私は加害者たちに近づいた。彼女たちは以前と変わらず、普通の生活を送っていた。私は彼女たちをデス・パレードの動画撮影場所に連れ去った。
そこで、私は加害者たちに闇のお姉さんの衣装を着せた。そして、彼女たちに、自分が体験したいじめを再現させた。カメラの前で、彼女たちは泣き叫び、命乞いをした。
しかし、私は冷静だった。闇のお姉さんの仮面を被った私は、もはやかつての私ではなかった。
撮影が終わった後、私は加害者たちを解放した。「これで終わりだ。あなたたちは一生、この恐怖に苛まれ続けるだろう」
加害者たちは震えながら逃げ去った。私は闇のお姉さんの衣装を脱ぎ捨て、一人になった。
私は自分の犯した罪を痛感した。私は花火の加害者たちに復讐しただけでなく、闇の住人となり、多くの人々を絶望させた。
私は全てを終わらせようと決意した。私はデス・パレードのサーバーを破壊し、影山を警察に突き出した。
私は自分の罪を償うために、警察に自首した。刑務所の中で、私は花火の歌を歌い続けた。いつか、闇が消え去ることを信じて…
数年後、私は刑務所を出所した。私は過去の自分を乗り越え、闇に立ち向かう決意を新たにした。私は花火の夢を叶えるために、アイドルを目指すことを決めた。
私は過去を背負いながら、闇と戦うアイドルとして、再び動画投稿を始めた。私の歌声が、誰かの希望になることを信じて…
そして、私は「光の偶像(Hikari no Guuzou - Idol of Light)」と呼ばれるようになった。